規則正しく美しい結晶

小川洋子著『科学の扉をノックする』(集英社文庫2011.03)から。

水晶などの鉱物の結晶が持つ規則正しい美しさは、自然の力によって作られる。「・・・結晶は単純なんですね。自然は特別難しいことをやっているわけではありません。一番抵抗の少ない、小さなエネルギーで集まると、こういう結晶の形になるのです」(鉱物科学研究所・堀秀道)。無駄なエネルギーを使わず、余分な装飾を排除し、最もシンプルな状態であろうとするのが自然のあり方で、だからこそ単純な規則性が重要な役割を果たすようになる。結晶は必然の結果なのである。こうして自然は、本質的な美を表現している。

 もともとこの世界は、単純で平和で豊かに造られていました。しかし、最初の人アダムが創造主に反逆したため、人間社会は調和と秩序を失ってしまいました。そして自然も、管理者である人間とともに連帯責任をとらされて、一緒に苦しむようになったのです。このたびの震災と津波も、その自然の呻き苦しみです。

でも、鉱物の世界は創造主に抵抗することなく、単純さを保っているのですね。だから、結晶の規則正しい美しさを見ると、心が安らぐのかもしれません。私たちも素直に創造主に委ねることができたなら、人生はもっと単純で美しいものになっていたのだろうと思います。神の愛を喜び、恵みをそのまま受け入れていたなら、私たちの人間関係もここまで複雑にはなっていなかったでしょう。人間は心と時間とエネルギーの多くを問題の解決のために費やして、一生を終えているように見えます。しかも未解決のまま。

創造主はそんな人間のために、キリストの十字架を用意されました。十字架の救いは本当にシンプルです。キリストを信じ、神の恵みに人生を委ねることだけなのですから。自分の損得や見栄や勝ち負けにこだわることを止め、十字架に表された神の愛だけを見つめて考え、行動するなら、規則正しい美しさが人生に結晶するのでしょう。「信仰の創始者であり、完成者であるイエスから目を離さないでいなさい」(ヘブル12・2)。これが基本です。