陰謀論とトンデモ本(上)

「アポロ月着陸陰謀説」をお聞きになったことがあるでしょう。「1969年のアポロ11号の月面着陸はなかった。アポロ計画はNASAの陰謀である」という説です。その根拠の一つは月面着陸の映像の中での「不自然」です。たとえば、「月には空気がないのに、飛行士が手を放してもアメリカ国旗はなびき続ける」「星が背景の夜空に写っていない」「宇宙船が着陸した地点に、クレーターができていない」などです。もっともらしいでしょ?!

しかし、専門家は、月には空気がないからこそ、一旦動かした旗は空気抵抗を受けずなびき続ける、焦点が地上に当たっているので星は写らないのが当然、空気がないので逆噴射によるクレーターなどできるわけがない、と説明しています。今やまともな人で「アポロ陰謀論」を信じる人はないということですが、世界中でなおこの陰謀論を信じる人は多いようです。日本でも評論家の副島隆彦『人類の月面着陸は無かったろう論』という本を出版して、その初歩的な無知を指摘され、「トンデモ本」(とんでもなく荒唐無稽な大嘘の本)に認定されました。

1992年、こうしたトンデモ本が盛んに世に出回るので、一般投票による「トンデモ本大賞」が設けられました。副島隆彦の本も2005年に選ばれています。これまでさまざまな陰謀論や心霊本、予言本、疑似科学本などが受賞してきました。『ノストラダムス戦争黙示』『異次元の扉』『量子ファイナンス工学入門』『富を「引き寄せる」科学的法則』『宇宙人との対話』(大川隆法)『平和宇宙戦艦が世界を変える』など、タイトルだけで引いてしまいますが、信じ込む人も少なくないのです。問題なのはキリスト教系のトンデモ本です。もっともらしく書かれて引き込まれるので、これに洗脳されたクリスチャンも多いのです(怪しい本は牧会部にお聞きください)。