自然は呻いている

 動物は、他の種の動物を襲って餌食にしても、仲間同士の殺し合いはしない。しかし、人間は、仲間殺しの歯止めが利かず、大量殺戮をする。人間は自然界で最も残忍な動物である。以前は、学者の間でもそのように言われていました。
しかし、近年の研究で、同じ種の中で殺し合うのは、人間だけではないことがわかってきました。たとえば、ライオン、ゴリラ、チンパンジー、オオカミ、ハイエナ、アリなどは、隣接する同種の群れを襲撃し、大量殺戮することがあるというのです。
ゴリラは、雌をめぐって雄同士が争い、勝てば相手の雄だけでなく、その子供たちまで殺します。ゴリラの死因の第一位は、ゴリラ同士の殺し合いです。ゴリラの母親は生涯で少なくとも1頭の子供は雄に殺され、なんと死んだ子供ゴリラの38%は雄による子殺しだというのです。チンパンジーも仲間を殺し、戦争を仕掛け、集団殺戮をします。計画を立てて他集団を皆殺しにすることもあります。アリの群れも、隣の群れを集団で襲い、殺戮します。オオカミも縄張り争いをして、相手のオスだけでなく、メスを殺すこともします。
動物が群れを作るのは、捕食のためだけでなく、他の群れへの攻撃や自衛のためでもあります。(J.ダイヤモンド著『若い読者のための第三のチンパンジー』草思社文庫参照)
進化の世界は、食物連鎖の世界であり、そして同族内の熾烈な戦いの場です。人間もそうした進化の文化を引き継ぎ、果てしなく争いを繰り広げ、他の動物や他民族を絶滅に追いやってきました。この世界の生き物が共存しなければならない本質的な理由はありません。人類も、民族間、国家間で生存をかけて争うのが、むしろ「自然」なのです。
 もちろん聖書は正反対の立場です。世界は神によって創造され、「非常に良かった」(創世記1:31)という状態から始まりました。その管理を任された人間が創造主に反逆したため、「被造物(自然界)全体が今に至るまで、ともに呻きともに産みの苦しみを」(ロマ8:22 )するようになったのです。自然界の呻きの根源は、創造主に対する人間の反逆=罪にあるのです。
 人々は、進化は科学だが、神による創造は非科学的だと一蹴します。もしそうだとしても、進化の世界には平和も未来もなく、生まれては死んで無となる人間にも希望はありません。この世界を果てしない争いと絶滅から解放できるのは、創造主だけです。