脳の90秒ルール

今週も、ジル・B・テイラー(神経解剖学者)の『奇跡の脳』(新潮文庫)からお話しします。
 彼女は、その本の中で、脳で起こる90秒のプログラムについて書いています。
例えば、私たちの脳で怒りの感情が誘発されたとします。すると、脳から化学物質が放出され、体に満ち渡り、顔が赤くなり、脈拍が増大するなどの生理的な反応が引き起こされます。しかし、最初の誘発から90秒以内に、怒りの化学的な成分は血流から消え、自動的な反応は終わります。もし90秒過ぎても怒りが続いているとしたら、それは本人が自発的に怒りのプログラムの回路を選択したからです。そして、ほとんどの人が、その選択を自動継続(無意識)にしているようなのです。そうすることで、その怒りを心に蓄積していきます。
 しかし、90秒間、じっと待っていれば、体に満ち渡った怒りの化学的な成分は消え、生理的な反応は終息するわけです。その90秒間に新たな怒りを脳に誘発させないようにすればいいということになります。
そのために、脳に誠意をもって話しかけます。「あなたが感知し、思考し、判断する能力には感謝している。でも、私はこのことはもう考えたくないので、これっきりにしてほしい」と。あるいは、「脳よ、いい加減にしろ、終わりと言ったら終わりだ」「私は忙しい、そんなことにこれ以上関わっていられないんだ」と、脳を説得するのです。
それでも、怒りがぶり返して来たら、どうするか。脳に、①今一番関心のあることを深く考えさせる②ものすごく楽しいことを考えさせる③何かやりたいことを考えさせる、ことで自分の心を転換するのです。怒りだけでなく、妬み、悲しみなどの感情に対しても適用できます。
テイラーはクリスチャンではありません。しかし、彼女の方法は、「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべてのことについて感謝しなさい」(Iテサロ5:16-18)を実践するために、採用できそうです。