イスラエルの戦略

近年、反ユダヤ主義が世界的な広がりをみせる中で、身の危険を感じるユダヤ人が世界中からイスラエルに帰還しています。2017年の帰還者は、78か国から2万8400人でした(「オリーブライフ」4月号P2)。
彼らは「晴れて『イスラエル国民』になると、その意識は『個人としていかに生き残るか』から、『どうしたらイスラエルを安全な避難場所にできるか』に変わるといいます。帰国しても国全体が危険にさらさらされているからです。何しろ、ガザのイスラム過激派のハマス、レバノンのヒズボラは、パレスチナ国家の樹立よりも、イスラエル国家打倒、ユダヤ民族の絶滅を第一目標に掲げているのです。それを支援しているのがイランです。レバノンだけで2万発のミサイルがイスラエルに向けられています。
イスラエルはこの危機意識から、「軍事、情報、通信、医療、バイオなど、人間の安全・生存に直結したジャンルに知を集結し」、続々と新しいIT産業を起こしています。(米山伸郎著『知立国家イスラエル』)。それに活力を与えているのが帰還民というわけです。
 しかし、イスラエルの生き残り戦略は、イスラエルに敵対する国や、反ユダヤ主義と戦うことだけではありません。むしろ、「イスラエルがいてくれて助かる」「イスラエルが存在しないと困る」という評価を世界に築くことにあります。たとえば、2004年に設立されたシンクタンク「リュート・インスティテュート」は、「21世紀の世界改修事業」のプロジェクトを唱道しています。これは、イスラエルと世界中のユダヤ人が「世界をよりよくしていく」ことに積極的に貢献するという壮大な構想です。イスラエルが開発したIT産業、海水の淡水化技術、砂漠の農業技術、妊婦や新生児に必要な優れた医療品などを、アラブ諸国を含め、世界に提供するというプランです。
 アブラハム契約の世界を祝福するという役割、世界の破れ目を修復するというティックン・オーラムの思想が、最善の生き残り戦略だと思います。恫喝や騙し合いではなく、また単に防衛力を増大させるだけでなく、いかに世界を祝福するかが平和を創る道です。
 私たち教会にとっても、世の闇に抵抗する防衛力と、世を祝福する姿勢は重要です。この町が、GCCが存在しなくては困ると言われることを目指します。