コラーゲン神話

先週、夫婦で回転寿司に行きました。かつてコラーゲンを含むエンガワをよく食べていましたが、今回は手を出しませんでした。
 コラーゲンは肌の張りを支える重要なたんぱく質です。ネットには、「えんがわのコラーゲンには美容効果がある。焼くとなくなるので生で食べたほうがいい」とあります。
 しかし、それは「現代神話」の一つなのです。
 分子生物学者の福岡伸一氏が、「コラーゲンを食べ物としてたくさん摂取すれば、肌の張りを取り戻すことができるだろうか。答えは端的に否である」と書いています。摂取されたコラーゲンは消化酵素でバラバラのアミノ酸に解体されるだけで、そのまま体内でコラーゲンになるわけではないし、しかもコラーゲンは消化されにくいのです。「コラーゲン配合」を歌う化粧品も効果なし。肌から吸収されることはありません。(『動的平衡』小学館)。
考えてみれば当り前のことです。トンカツを食べても、豚の肉がそのまま人間の体になるわけではないのですから。肉はどんな肉も、分解されてアミノ酸になるだけです。
 商品に「コラーゲンがたっぷり含まれている」「コラーゲン配合」と表示するのは不当ではありません。しかし「コラーゲンで肌に張りを取り戻せる」というのは不当表示です。前者は消費者が勝手に騙されているだけですが、後者は消費者を騙しています。
というわけで、私たちは「光もの」を中心に食べた次第です。
 ところで、現代社会には、現代なりの神話があふれています。科学の名を借りた神話も、「常識」となった神話も、数々あります。今日の流行(ハヤリ)は健康神話でしょう。全部とは言いませんが、はまっていませんか。都市伝説と呼ばれるものや、UFOや心霊現象、超常現象も神話の類です。世の人生論や幸福論、心理学や哲学も神話で構成されていると言って過言ではありません。
 中でも、最も厄介な神話は「神は存在しない」という神話です。無神論も進化論も一種の神話であることは、とっくの昔に常識になっているのですがねぇ、気づいていない人がけっこう多いのです。