読解力の大切さ

数学者新井紀子氏が、著書『AIvs教科書が読めない子供たち』で、こう述べています。  数学の視点に立てば、シンギュラリティはあり得ないことは自明である。つまり、AIやAIロボットが人間の仕事のすべてを奪う日は来ない。これは数学者なら常識である。AIが肩代わりできる仕事は、数式で表現できる分野に限る。 *シンギュラリティとは、AIが人間の力を借りずに、自分自身よりも能力の高いAIを創り出すことができるようになった地点のこと。一般には、AIが人間の能力を超える地点の意味。AIが自分の意思をもって、自律的に行動するとされる。  日本人の読解力について大々的調査・分析を行った結果、中高生の約3割が日本語の文章の表層的な意味さえ正確に理解する力(読解力)がないことが判明した。確かに彼らは、受験用の英単語、歴史年表、数学の計算などの知識や能力は豊富である。しかし、それこそはAIが最も得意とすることであり、誰もAIには勝てない。  ただ(しかし)、読解力を基礎とするコミュニケーション能力や理解力だけは、AIには肩代わりできない。ということは、読解力のない子供たちは、将来AIに職を奪われることになる。  『言ってはいけない』『もっと言ってはいけない』の著者橘玲氏も、OECDが実施した国際調査PIAACの結果を踏まえ、「①日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない(読解力がない)②日本人の3分の1以上が小学3、4年生の数的思考力しかない ③パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割しかいない」と述べています(それでも日本人の読解力は、世界ではトップクラス)。  驚きですが、これが現実なのです。この事態が問題にならなかったのは、それでもできる仕事がたくさんあったからです。しかし、これからは、そうした仕事はAIに奪われてしまいます。たとえ新しい仕事が生み出されても、AIにはできない仕事でなければ雇用には結び付きません。これは、日本の受験教育に問題がありそうです。  では、読解力を養うにはどうすればいいのか。それは、教会の聖書教育にとっても重要なことです。新井氏はその調査もしています。それは来週に。