地震への備え⑥「率先避難者」

1960年、チリ大地震の津波が太平洋沿岸を襲い、142名の死者・不明者を出しました。身近で地震が起こったわけではないのに、突如として津波に襲われるという衝撃は、しばらく語り継がれ、私も小学校の授業で聞いた記憶があります。

2010年2月、またしてもチリ大地震があり、日本の気象庁は189の市町村168万人に避難指示と勧告を出しました。しかし、避難した人はわずか6万3千人だったそうです。

2004年12月、スマトラ沖巨大地震では30万人近い死者を出しました。住民の多くは津波の知識がなく、海水が引いて魚が打ち上げられると、それを取りにいこうと沖に向かった人たちさえいました。沖に津波が見えてからでは、逃げても、もう間に合いません。

東日本大震災の犠牲者も多くは津波によるものでした。何度も聞き、テレビでその映像で見、また警告されていても、まさかと思うのです。

日本は「大地変動の時代」「巨大災害の世紀」が始まったと、地震学者たちは警告します。「災害は忘れた頃にやってくる」という時代ではなく、「忘れないうちにやってくる」時代なのです。しかし、それでも、政府を始め、多くの日本人が、危機を実感していないと、地震学者たちは苛立っています。

京都大学の鎌田浩毅教授は最近の著書『次に来る自然災害』(PHP新書)で、「率先避難者になれ」と勧めています。津波などの危険を察知した人が、「私と一緒に逃げる人だけが助かる」と叫び、それに呼応して付いて来る人だけを引き連れて避難しなさいというのです。警告しても聞く耳を持たない人を説得していては、全員助からなくなるからです。

聖書が教える終わりの時代と同じです。まだ時間はあるだろうと、眠ったような信仰であってはなりません。「きょう、もし御声を聞くならば、御怒りを引き起こしたときのように、心をかたくなにしてはならない」(ヘブル3・15)のです。