裸足のアベベ、そして平和の福音の備え

猛暑の東京オリンピックが終わりました。

57年前の東京五輪のマラソン優勝者は、エチオピアのアベベ・ビキラでした。彼は、その前回のローマオリンピック(1960年)では、石畳のアッピア街道を裸足で走って優勝して世界に衝撃を与え、「裸足のアベベ」と呼ばれました。

そのアベベに、靴を履かせた人がいます。アシックスの社長、鬼塚喜八郎です。鬼塚は、「このシューズを履いて優勝してください」とアベベに直談判しました。裸足で勝ち続けていたアベベは最初断りましたが、熱心な鬼塚に根負けし、「白いオニツカタイガー」を履いて、日本開催の毎日マラソンに出場。2位に10分以上差をつけて優勝しました。レース後、アベベは鬼塚に、「シューズのおかげでグリップが確実になり、記録も伸びた」と感謝しました。

さて聖書にも、靴のことが書かれています。「足には平和の福音の備えを履きなさい」(エペソ6:15)。当時靴は、武具のひとつであり、ローマ兵は裏に鋲が打たれたサンダル状の軍靴を支給されました。これにより、山でも岩地でも、戦いに行けたのです。靴は、ただ外出時に習慣的に履くものではなく、なければそもそも戦えない、兵士の最重要アイテムでした。

私たちにとって、なければそもそも戦えないアイテム。それが、「平和の福音の備え」です。「備え」とは、「土台」とも訳されるので、靴底のイメージと思われます。私たちは、平和を土台として、サタンと戦うのです。主イエスの十字架によって、神との平和がもたらされました。この福音を感謝して受け取る信仰を基盤として、戦います。

このシューズをくださったのは、十字架で平和と回復をもたらしてくださった私たちの主イエスです。戦いが続いて力を失くすとき、私たちは平和の福音の土台に立ち戻ることができます。岩地のような困難な状況で戦うとき、平和の福音の土台が私たちの歩みを支えてくれます。「白いオニツカタイガー」よりもだんぜん戦える靴が、救われた私たち全員に、支給されています。(新田優子)