人の間に生きながら世界の回復を目指す

「シオンとの架橋け橋」のウェビナー(今年1月)で、レオン・マジン師がされたルカ4章のメッセージを分かち合いたいと思います。

 イエスさまは、パリサイ人に厳しい言葉を投げかけることが多いように思われますが、常にパリサイ人と対決していたのでしょうか。答えはノーです。主イエスは、ナザレのシナゴーグで、「いつものとおり」安息日に会堂に入り、朗読されたと書いてあります。シナゴーグはパリサイ人の活動拠点です。そこで日常的に教えたということは、彼らと敵対してはいなかったことが分かります。

 次に、イエスさまはイザヤ書61章を読まれましたが、ご自分で選んだ箇所でしょうか。これも、答えはノーです。捕囚から帰還した学者エズラが作った、トーラーの朗読日程に従って、その日に割り当てられた箇所です。

エズラは祖国に戻った際、ユダヤ人があまりに聖書から離れているのを憂い、みことばが毎週必ずシナゴーグで読まれるように、スケジュールを定めました。イエスさまはその伝統を重んじ、歴史の流れにも沿って、働きをなさったのです。

 では、イエスさまが新しかったのは、どのような点なのでしょうか。朗読された御言葉はイザヤ書の一部ですが、聴衆はこの預言が60章から続いており、シオンの復興を語っていることを知っていました。しかしイエスさまは、この箇所から単にシオニズムを語ったのではなく、世界全体の回復を語られました。その回復は、ご自身の十字架と復活を含み、使徒たちの働き、地の果てまでの宣教、イスラエルの国の再興とユダヤ人の信仰回復、そして主の再臨、新しい天と地、それらを含んだ、神の壮大な計画を全て見越した復興だったのです。

 このように、イエスさまは、信仰者たちが築いてきた歴史や伝統をきちんと重んじながら、人の思いの至らないような未来、遥かにある神の歴史の到達点を目指して、解き明かしをされました。 人の間で生きながら、世界の回復を目指す。その両方を完全に果たしてくださったイエスさまが、私たちの愛する主です。(新田優子)