その名は「天命水」

北アルプスの最高峰、奥穂高岳頂上直下にある穂高岳山荘は、日本の山小屋の草分けです。海抜約3000mの稜線上にてクラッシック音楽が聴けることでも有名です。ここで飲料水として汲み上げられている「天命水(てんめいすい)」のことを最近知りました。

 6月半ば過ぎともなると小屋開きの準備が始まりますが、毎年残雪と氷を掘り進んで、まさに命がけでこの水源に到達するのだそうです。残雪に覆われた岩の窪みに雪解け水が湧くように流れて出ている様は、岩から水を出したモーセの話を思い出させます。

冬の間は何もかも凍りついていた高山でも、春が来れば雪が溶けだし水流となって沢を下っていきます。下界に向かって流れ落ちる前のひと時、岩間の窪みに受け止められた水は、人がそこから飲むのを待っているかのようです。

 「わたしを信じる者は、聖書が言っているとおりに、その人の心の奥底から、生ける水の川が流れ出るようになる。」(ヨハネ7:38)

主イエスは仮庵の祭りの最後の日に、こう大声で言われました。

 何事も凍りついて動かなくなってしまったかのような試練の日々も、時が来れば必ず事態が動き出す。人の命を奪うものだった冷たい雪と氷が、人を生かすいのちの水となって流れ出す。そんな神の憐れみを、岩山の稜線下に湧く水に見る思いです。

 先日、寛海兄のヘブライ語クラスで、詩篇133篇を読みました。

頭の上に注がれた尊い油のしたたり落ちる様が、「シオンの山々におりるヘルモンの露」にたとえられています。ヘルモン山は約束の地の最北にある3000m近い山で、やはり山頂に雪を頂いています。真亜沙姉が、ヘルモンの雪解け水がヨルダン川となって南に下り、ガリラヤ湖を経てシオンの山々に至る、というイメージを語ってくれました。シオン(エルサレム)は標高800m近いですから自然にはヨルダン川からそこまでは流れ上りはしないのですが、そんな理屈はさておき、

主がそこに とこしえのいのちの祝福を命じられたからである。

で終わるこの詩をともに味わったのでした。 (YaK) *ヘブライ語新規クラス募集中です!