地球外生命体にメッセージを送る愚かさ

天文学者たちが地球外生命体を探すために、莫大なお金をかけているが、呆れるほかない、とジャレド・ダイヤモンドが著書『第三のチンパンジー』(草思社)の中で述べています。ダイヤモンドは世界的に著名な進化生物学者で、宇宙のどこかに高度に進化した生命体がいる可能性を否定しているわけではありません。では何を呆れているのか。
 彼はこう言います.「もしそんな生命体が本当に見つかったなら(あるいは向こうが私たちを見つけたなら)、そのとき一体何が起こるのかを真剣に考えようとはしてこなかった。宇宙人が人間と腰を下ろして楽しい話に興じると思っているのか。彼らの進歩したテクノロジーを、私たちに分けて与えてくれるとでも思っているのか。」
 人間に最も近い動物はチンパンジーですが、人間は彼らと腰を下ろし仲よく話すどころか、撃ち殺し、檻に閉じ込め、実験材料にし、生息地を破壊してきました。人間同士でも、文化の進んだ民族は、発展の遅れた民族を尊び助けることなどなく、むしろ侵略し、殺し、奴隷化し、植民地化し、搾取するのが常でした。進んだ者が遅れた者を支配し、強い者が弱い者を抑圧する、それが地球の歴史です。なのに、進歩した宇宙人が地球人を優しく扱ってくれると、そんな虫のいいことがなぜ期待できるのでしょうか。
ダイヤモンドは、地球から宇宙に向けてメッセーシ電波を送り、それがまだ発見されずに済んでいるのなら、それは感謝なことだと言います。科学技術が高度に発達した宇宙人が地球に来たら、滅ぼされるか、植民地化される確率のほうが圧倒的に高いのですから。
 罪人は、自分の罪深さを自覚せず、自分は善良だと思い込み、相手も善良で慈しみ深いはずだと考えます。そして、宇宙にラブコール電波を送るのです。
エレミヤ書にこうあります。「人の心は何よりも陰険で、それは直らない」(17:9)。これが人間の本性なのです。人類の歴史がそれを証明しています。この本性を認め謙虚になれるなら、巨費を投じて侵略者を呼び寄せるような、愚かなことはしないでしょう。しかし、「愚か者を臼に入れ、きねでこれを麦といっしょについても、その愚かさは彼から離れない」(箴 27:22)のです。それが罪人の罪人たるゆえんです。
ただただ自分の罪深さを自覚し、謙虚になること、それが陰険と愚かさをから救われる第一歩です。