私たちは聖日礼拝で、全員起立して、オルガンに合わせて讃美の歌を斉唱します。これは明治期に欧米から入った礼拝形式だそうです。この全員起立して歌を斉唱するという慣習は、日本の学校に取り入れられて、文部省唱歌、校歌、君が代の起立斉唱として定着しました。それ以前の日本にはなかったことですが、学校だけでなく、様々な記念式や儀式でも取り入れられるようになりました(佐藤八寿子著『ミッション・スクール』参照)。「君が代」斉唱が、キリスト教の礼拝方式にのっとって行われてきたとは皮肉ですね。
小学校で歌った唱歌「星の世界」を覚えておられますか。このメロディを聞いて、どんな歌詞を歌い出すかで、クリスチャンかどうかがわかります。これはチャールズ・コンヴァース(1832〜1918)作詞「いつくしみ深き」(What a friend we have in Jesus)と同じメロディです。コンヴァースは、結婚前夜に事故で婚約者を亡くしました。その悲しみの真っただ中で「友なるイエス」を見、亡きフィアンセと自分のために悲しんでくれている自分の母を慰めるためにこの曲を作ったそうです。そう思って、歌詞の一節一節を味わうと、感動があふれてきます。しかし、文部省唱歌では「輝く夜空の星の光よ。まばたく数多の遠い世界よ」と、全く別の世界が歌われます。メロディだけ借りて異なる歌にしてしまったのです。
キリスト教が日本の文化に入ろうとしても、福音は捨てられ、それを運ぶ形式だけが利用される場合がほとんどです。クリスマスの祝い、結婚式、葬儀の仕方もそうです。中味のお菓子は食べず、ファンシーな箱だけを珍重しているのです。
私たちは、御言葉とその実践をもって、周囲の人々のたましいに影響を与える教会になりましょう。そのために日々、私たち自身が御言葉を味わいましょう。「あなたの御言葉は、私の上あごになんと甘いことでしょう。蜜よりも私の口に甘いのです」(詩篇119・103)。この甘さを伝えるために。