標高1600mのモンゴルの高原は、厳冬期で平均気温が零下20度、時に40度にもなる。「この気象条件では、大抵の人類は屋外活動を停止するが、漠北民は違う。この程度の寒気でも狩猟と戦争は止めない。馬と服と武器のお蔭だ。漠北の馬(モンゴル馬)は寒さに強く、いてついた大地を蹄で削って枯れ草を食う。このため、冬期も体力を保ち、人と物を運んでくれる。漠北の服も防寒に優れている。綿か毛の下着の上に裏表二重の毛布服を着る。・・・後頭部から肩に達する毛皮の冠り物も(保温に)有効だ」(堺屋太一7・1・22日経)。
チンギス・ハンはその馬と服と武器で、世界史史上最大の領土を征服しました。モスクワを攻略しようとしたナポレオンやドイツ軍が、厳しい冬将軍のために敗走したことは有名な話ですが、極寒もモンゴル軍には何の脅威にもなりませんでした。彼らには通常の戦闘条件だったのです。
生き物は、厳しい条件下に置かれると、その厳しさに適応しようとします。そんな能力が備わっているのです。逆に安楽な環境に置かれれば、体も心もそれに馴染むようになっています。試練がくれば、どちらの環境に育ったほうが強いかは言うまでもありません。また、厳しい条件に置かれた者は、新しい土地を開拓する精神にも富んでいるようです。
あらゆる迫害を耐え抜いたパウロは、「私は、貧しさの中にいる道も知っており、豊かさの中にいる道も知っています。また、飽くことにも飢えることにも、富むことにも乏しいことにも、あらゆる境遇に対処する秘訣を心得ています」(ピリピ4・12)と語っています。安楽な日本の環境で、私たちはどのようにしてそんな秘訣を習得できるしょうか。
すべきことは二つのこと。一つは、苦難を、忍耐と品性と希望を生み出す機会として喜んで受け止めること(ローマ5・3)。もう一つは、信仰のチャレンジをして自ら自分を厳しい条件に置くことです。厳しい条件がなければ、自ら設けるほかありません。