西島和紙の奥ゆかしさ

山梨県巨摩郡の工芸品「西島手漉(てすき)和紙」は、ミツマタを主原料にした滑かで光沢のある毛筆に適した紙です。全国の書道家などに愛用されています。

 NHKの「おしゃれ工房」で、その紙職人と紙干職人の熟練したを見ました。面倒な作業をこなし丹念に仕上げて行く工程は、もう名人芸と言えます。西島和紙を愛用している書道家も画面に登場しましたが、その言葉にうなりました。

「西島和紙は、職人の苦労が消えていて、書道家が自由に書きやすいようにされています。紙に、職人の自己主張がないのです。だからこそ、筆を入れ終わったとき、紙職人のわざが思い起こされます。」

 私たちが主に仕え、教会や人のために奉仕することにおいても、同じ心構えが求められると思いました。つまり、奉仕に自己主張がないようにし、聖霊が自由に働かれやすい心がけるということです。そうすると、聖霊が御わざをなさった後に、奉仕した人の心遣いがにじみ出来るようになるのです。

 個性、個性と言って、自分を際立たせ、自己実現、自己顕示したがる時代ですが、クリスチャンは逆に、自分を消し、聖霊に自由に働いていただくことを求めます。そのように聖霊が私たちを通してわざをなされたとき、一人一人の個性が浮き出てくるのです。

 ペテロはこう語ります。「・・・奉仕する人があれば、神が豊かに備えてくださる力によって、それにふさわしく奉仕しなさい。それは、すべてのことにおいて、イエス・キリストを通して神があがめられるためです」(Iペテロ4・11)

紙職人の奥ゆかしい謙虚さは、結果的に、筆の達人によって引き出されます。主に仕える私たちも、自分を消すことで聖霊に用いられたいと思います。