アラスカ

1867年、クリミア戦争で疲弊した帝政ロシアが、アラスカを「二足三文」でアメリカに売却してしまったのは有名な話である。いや二足三文どころではない。1平方キロ5ドルで、日本の国土の4倍もの土地を渡したのである。まさにただ同然である。

 では、当時のアメリカの方では「してやったり」であったかというと、それが正反対。そんなアイスボックスのようなアラスカを買い取って、何の益があるのかと、国民からは轟々たる非難が起こった。1平方キロ5ドルとはいえ、払った金額は720万ドル(当時の国家予算は3億5千7百万ドル)だったからである。買収交渉をした国務長官シュワードは非難の的となり、アラスカは「シュワードのアイスボックス」と呼ばれたという。

 ところが、永久凍土の不毛の地には、石油をはじめ重要な鉱物資源が眠っていた。一時代は州都アンカレッジが北周り航空路の要衝地となったし、今も観光地となっている。また、軍事的にも重要な戦略拠点となっている。「アイスボックス」と見下げられた土地が、アメリカに莫大な利をもたらしたのである。

 「あなたがたは、次の聖書のことばを読んだことがないのですか。『家を建てる者たちの見捨てた石。それが礎の石になった。これは主のなさったことだ。私たちの目には、不思議なことである』」(マタイ21・42)と、キリストは語られている。役に立たないと捨てられたものが、土台なって世界を支えるのである。「捨てられた石」とは、キリストのことである。パリサイ人、長老たち、当時の宗教指導者が邪魔者として十字架につけた大工の息子に、永遠の命の泉が隠されていた。この方を土台として、教会は建て上げられ、世界に広がった。

 かつて「アラスカ」のように不毛な存在であった罪人が、「二足三文」ではなく、神の子のいのちを代価として買い取られた。私たちにも「資源」が埋もれている。主はそれを掘り起こしてくださるのだ。