楽観回路

脳学者茂木健一郎さんが、「脳の中には、『楽観回路』というべきものがあり、これがきちんと働かないと、『鬱』の状態に陥ってしまう」(『今、ここからすべての場所へ』筑摩書房)と述べている。

「私は大丈夫だ。私の『楽観回路』は正常に働いている」。そう信じるなら、その通り、ちゃんと働いている。だから、そう信じればいいのだ。そうすれば、『楽観回路』は機能し始める。それが、『楽観回路』というものだ。

英国の実業家アーサー・ランクは、ひどい心配性だった。明日のことを思い煩って、,心が真っ暗になるタイプである。彼は自分の心配性を思い悩んだ末、あるときから、水曜日を「心配する日」と定め、1週間の心配事をまとめて思い煩うことに決めた。つまり、心配事が生じるたびに、それをメモ用紙に書いて「思い煩い箱」に入れ、水曜までは忘れておくことにしたのである。そうして水曜日、件の箱を開いてみた。ところが、ほとんどの問題がもう問題ではなくなっていた。心配する必要などなかったのだ。こうして、彼は無意味なことに時間を浪費せず、エネルギーを無駄にしない方法を発見した。

 主は、「あすのための心配は無用です。あすのことはあすが心配します」(マタイ6・34)と諭しておられる。心配しても良きことは何も生み出さない。しかし、心配しないこと自体がゴールなのではない。ペテロは、「あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい。神があなたがたのことを心配してくださるからです」(?ペテロ 5・7)と教える。すべてを支配しておられる主に信頼し、主にすべてのことを委ねるようになることが目的である。

自分の心配性は直らないと思っている人も、御言葉と祈りの訓練で、思い煩うことが減っていく。茂木さんの言うとおり、脳に『楽観回路』が用意されているのなら、その回路は、主に信頼したときにこそ活発に働くのだろう。