ナイジェリアのアッカンベ

ナイジェリアで、近年、イスラム過激派「ボコ・ハラム」によるキリスト教会やクリスチャンを狙ったテロが頻発しており、多くの犠牲者を出しています。

ナイジェリアというと、私には思い出す人がいます。シカゴ郊外の神学校の寮で、ルームメイトとなったナイジェリア人神学生です。青光りする真っ黒な顔でした。その顔がにっこり笑うと、唇のピンクが際立って、愛嬌がありました。名は、マイケル・フェーヒントラ・アッカンベ(Akangbe)。私たちは兄弟のように行動をともにしました。

彼の両頬には対称となるように三本の刺青がありました。彼の部族の風習で、彼の世代が最後だったそうです。その刺青のことで、一部の白人学生にからかわれていました。在籍学生800人。ほとんどの白人学生は好意的でしたが、中には人種差別をする者もいたのです。しかし彼は「ミシガンの大学にいたときはひどかった。ここは神学校だから天国のようなものだよ」と、平然としていました。

私も人種差別されていると感じることが時々ありました。あるブルートのような白人学生は、挨拶しても全く無視でした。不愉快な仕打ちを受けたこともありました。私は彼には挨拶するのは止めました。しかし、アッカンベは違いました。何度無視されても挨拶していました。ある日、ふたりで歩いていると、前からその白人学生がいかつい顔で体をゆすりながら近づいてきました。アッカンベは私に、「見てろよ、今日はどうかなあ~」と言いながら、すれ違いざま「ハイ、デイブ」と声かけました。やはり無視です。アッカンベは背中を曲げてクックックと笑い、「ハハ、だめだった」。ところが、あきらめないで続けているうちに、その白人学生が無表情ながら「ハイ、マイケル」と返してくるようになったのです。そしてついに、向こうから笑顔で挨拶するようになりました。

あれから30余年、なつかしくてネットで彼の名を検索してみました。テロの続く母国で神学校の教授をしていたことはわかりましたが、安否を知る方法は見つかりませんでした。