ヤコブの手紙⑩ 目を上げよ

「すべての良い贈り物、また、すべての完全な賜物は上から来るのであって、光を造られた父から下るのです。父には移り変わりや、移り行く影はありません。父はみこころのままに、真理のことばをもって私たちをお生みになりました。私たちを、いわば被造物の初穂にするためなのです

豚は、木から落ちた果実を食べ尽くすと、辺り一面を掘り起こすが、何も出てこないので怒り始めるという寓話があります。豚は、果実が地面から出てきたと思い込んでいるからです。いつも下を向いて、何か落ちてはいないかと探す生き方を風刺しています。

人は、目先の利益や利便に動かされてしまいやすいのです。気がつかないうちに、次第に心が卑しくなっていきます。そうなっていると感じたら、即、天を見上げましょう。すべての良きものは、光を造られた父なる神から来るのです。

移り行く社会事象ばかり追いかけて、今がすべてであるかのような刹那的な生き方をしていませんか。今の小さな得のために、聖霊を欺いてはなりません。それは、将来の大きな損になります。永遠なる方を見上げましょう。「私の助けは、天地を造られたから来る」(詩 121・2)のです。

ヒナの時からニワトリと一緒に飼われ、大きくなっても地の餌をついばんでいたワシがいました。それを通りがかりの旅人が見て「あれはワシではないか」と言いますと、飼い主は「もはやニワトリだ。本人もそう思って生きている」と答えます。「違う。ワシだ」旅人はワシを高い山に運び、鳥に向かって宣言します。「お前はニワトリではない。ワシだ」。太陽の光に眼がきらりと光ると、ワシは大きな翼を広げ、大空高く飛び立っていきました。

父なる神は、私たちをキリスト(真理のことばによって、新しく「神の子ども」として生まれさせてくださいました。もはや地に縛られた罪人ではありません。天に属する神の子どもです。その身分を忘れてはなりません。