超正統派のデモ

ユダヤ人には、世俗派、改革派、保守派、正統派、超正統派の人たちがいます。超正統派はその黒装束と長い髭で知られます。イスラエルでは、彼らは国家のために神に祈る祭司の役割を果たす者として特別待遇を受けています。それは、兵役免除、納税免除、そして生活保護の給付です。一般の仕事に就くことはなく、フルタイムで聖書(トーラ―)の研究を続けています。また、彼らのチーフラビ(中心的指導者)らは、国家に大きな影響力を持っています。

しかし彼らは多産で、近年、人口が増え過ぎ、国家に大きな負担となってきました。兵役、労働、納税の義務を果たしている世俗派は当然、不満を抱くようになりました。そこでイスラエル政府は、超正統派にも兵役や社会奉仕を義務付ける法案作りを進めることにしたのです。

それに対し、超正統派のグループが全国に「100万人マーチ」と称するデモを呼びかけました。そして、今月3日、35万人から50万人もの人々による黒い波がエルサレムの西側のあらゆる空間を埋め尽くしたのです。

ところが今回のデモは、法案の反対を政府に訴えて警官隊と衝突するといったデモではありませんでした。なんと、神に法案を阻止してくださるように祈る、「祈りのデモ」でした。ラビがマイクで、「主よ、主よ、私たちは罪を犯しました。どうか憐れんでください」と大音声で嘆願し、それに大群衆が「アーメン」と唱和する大祈祷会だったというのです。「私たち」とは、正統派のことというより(正統派も含みますが)、「国家・国民全体」のことです。祭司を兵役に就かせ、律法の学びをおろそかにさせるような罪を国に犯させてはならないということなのでしょう。ネヘミヤの祈り(1章)をもじったというか、政府への皮肉をこめたような祈りです。

でも、国民全体の悔い改めのために祈りのデモ行進をするという考えは悪くないですね。