てんでんこ

「いのちがけで逃げなさい。うしろを振り返ってはいけない。この低地のどこででも立ち止まってはならない。山に逃げなさい。さもないと滅ぼされてしまう」(創世記19:17)。

「そのときは、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。・・・畑にいる者は着物を取りに戻ってはいけません」(マタ 24:16,18)。

 急いで逃げ出すべき時があります。無責任な逃亡ではありません。緊急避難です。自己中心的な避難ではありません。自分たちだけではなく人をも守るための避難です。

 三陸地方など東北の太平洋岸には、「津波てんでんこ」という教えがあると聞きました。それは、「津波が来たら、とにかく逃げろ。家族のことは考えず、各自てんでんばらばらに、ひとりで高い所に避難せよ」ということです。家族がお互いを捜していたら、津波から逃げられなくなります。家族思いの人ほど肉親を心配し、ぐずぐずして逃げ遅れてしまいます。それで、互いに捜しあわず、それぞれで安全な所に逃げると申し合わせておくのです。だから、まず自分が逃げるのです。「津波てんでんこ」は、自分と家族のいのちを救うために、とても大切な教えです。

「てんでんこ」は、私たちのたましいについても大切です。永遠のいのちか、永遠の滅びかも、緊急を要する選択です。家族思いの日本人には、自分のたましいだけが救われることをためらい、キリストの救いの恵みを受け取ることを先延ばしにすることが少なくありません。「愛する家族が地獄に行く(いる)なら、自分だけ天国にはいけない」という心情があります。しかし、家族は「てんでんこ」でキリストを信じて天国に逃げ込むべきなのです。でなければ、家族みんなが救われないことになってしまいます。

 私の実家は仏教と神道の家でしたが、曾祖母が、そして祖母が、さらに伯母が「てんでんこ」にキリストを信じ、救いが一族に広がりました。