十戒はあなたを自由にする

NHKBS番組『世の中は嘘と不正でできている?』は実に興味深いものでした。カナダのトロント大学や米ハーバード大学などの研究者の「うそや不正に関する実験」をもとに製作されたものです。

「アメリカでは、商品の不正返品は年1兆円」「テストを自己採点、自己申告にすると、ほぼ全員が不正をする」「試験が近付くと祖母の死亡率がふだんより中間試験で10倍、期末試験で19倍に増える」「捏造記事を次々繰り返したニューヨークタイムズ」「33%の科学者が研究で小さな逸脱行為に走る」「ニュートンはデータを改ざんし、コロンブスは航海日誌で嘘を書き、野口英世は学歴・肩書きを詐称した」・・・人間の罪の性質がドラマ仕立てで「面白く」暴かれていました。

研究者の一人は、頭の中で言い訳を考えて不正を働くことを、「まあこれくらいはいいだろう現象」と名づけていました。創造性の高い人ほど不正や嘘に走りやすいのだそうです。罪悪感に心を痛めなくても済む理由を作り出すのが上手だからです。また別の研究者は、一つの不正やズルをすると次々と不正に走りがちになることを、「どうにでもなれ現象」と呼んでいました。偽物のブランド商品を身につけるだけで、不正を行いやすくなるという実験結果もありました。

では、どうすれば、嘘や不正を食い止めることができるのか。こんな実験がなされました。学生たちに、「モーセの十戒」を書き出す作業をしてから算数の試験を受けさせ、自己採点、点数の自己申告をさせたのです。すると、「十戒」なしのときは全員が不正申告をしたのに、こんどは全員が不正をしませんでした。一戒も書けなかった学生ですら、正直に申告しました。「十戒」には、不正、嘘、ズルを阻止する力があるのですね。

「十戒」は、私たちを罪の誘惑から解放します。不正、嘘、ズルを誘われそうなときには、事前に十戒を朗読しておくといいですね。