不必要なもの

『鉄道のなぞと不思議に答える本』を興味深く読みました。一つ紹介しましょう。「ドアにはなぜ方開き式と両開き式があるのか」。新幹線やJRの特急列車は片開き、その他の電車はほとんどの車両が2枚の「両開き」です。しかし、昔はすべて1枚の「片開き」だったそうです。それが高度経済成長期の1960年代に換わりました。なぜその必要があったのか。「片開き」だと閉まるのに時間がかかります。ドアが閉まりかけても乗り込もうとして、ドアにはさまれる人が続出しました。また、閉まる寸前の片側のスペースに殺到するため、乗客同士のトラブルが絶えませんでした。そこで「両開き」にすることで、閉まる時間を半分に短縮したそうです。

人々のマナーの悪さが「両開き」に変えたわけです。それでも今日、駆け込み乗車は絶えていませんから、将来、安全に瞬間シャットする扉に換える必要がありますね。

考えれば、昔は優先席などはありませんでした。必要な人に席を譲るのは当たり前のマナーだったのでしょう。

 人間のマナーの悪さをカバーするために作り出された不必要なものが、社会にはあふれていると思いませんか。街に出たとき、「これは本来必要なものであったのか」と考えてみてください。たとえば、多すぎる信号、禁止事項を書いた数々の標識や看板や張り紙、過剰な車内放送、無粋なフェンスや金網、各種の監視員や監視カメラ、路上清掃人、・・・公衆道徳が守られれば不要なものです(ついでに、親や配偶者の小言も、多くはそうです)。

 教会は、互いに愛し合い、赦し合うことで成り立っています。でも、張り紙やお願いのアナウンスの必要がないように、これからも喜んで礼儀やマナーは守りたいですね。