大川橋蔵ってご存知ですか。往年の時代劇映画のスターです。昔の映画は、人気俳優中心で売れていました。邦画では、石原裕次郎、加山雄三、吉永小百合、山口百恵など、洋画ではアロン・ドロン、チャールズ・ブロンソン、ショーン・コネリー、ロバート・レッドフォード、ソフィア・ローレン、オードリー・ヘップバーンなどを主演とした映画が、私の記憶に上ってきます。
しかし、現代、人気があるのは、一人の有名俳優よりは、むしろ何人もの俳優が織り成していくストーリーが中心の映画です。もはや一人の主演俳優の個性だけでは、人々の多様な感性をつかみきれなくなっているのです。
それは、音楽や小説、ファッションや食べ物もそうです。たとえば、昔の国民的歌手のように、どの世代にも圧倒的に支持される看板歌手やアーティストは出なくなりました。爆発的売れる小説や小説家も出ません。食物も絶対的人気メニューは消え、好みは多種多様化しました。受け手の感性が多様化したからです。それが、現代の特徴です。
キリスト教会も同様だと思います。現代の教会は、一人のカリスマ的リーダーが強力に引っ張っていく組織ではなく、教会員が心を一つにして「キリスト物語」を織り成していく共同体であり、それを語り告げる場です。つまり、教会が世に表わしたいのは、教会に集う兄弟姉妹たちによる「キリストの証し」です。先週洗礼を受けられた方々を見てもわかるように、どのようにキリストの恵みが「私」の人生に現れたか、どのようにキリストが「私」を造り変えてくださったか、というストーリーはまことに多様です。その多様性は、多様化した現代人の心に福音が届くために必要なことです。
ただ、忘れてならないのは、教会の絶対不動の主役は、キリストおひとりだということです。その主役を深く知り、主役と親しく交わることによって、私たちは個性豊かな名脇役になれます。互いの違いと、主にあって一つであることを喜び合いましょう。