堀内都喜子著『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社新書)を読みました。その中に、「フィンランド人は隣国スウェーデン人に妙な敵対心をもっている」「それは長い間スウェーデンに占領されていたという歴史的なものから来ている」とありました。
フィンランドはアイスホッケーが国技です。宿敵はもちろんスウェーデンで、国際大会でスウェーデンに勝つことは優勝することより大切です。大量リードしていて逆転負けを喫した時は、「忘れられない屈辱的、悲劇的な日だ」とメディアは報じ、また、冬季オリンピックで、スウェーデンが他国に負けると、嬉しそうに報道したといいます。また、フィンランド人はスウェーデン人の悪口を言うのが大好きで、面白おかしくこき下ろすジョークが多々あるそうです。外国で悪さをする時は、「私はスウェーデン人」と嘘をつく人もいるとのことでした(しかし本当は、両国人は仲が良く、行き来も盛んなのだそうです)。
隣国同士というのは、とかく難しいものです。英国とアイルランド、イランとイラク、ベトナムとカンボジア、そして日本と韓国など・・・。遠くの国から見れば両国の何がそんなに違うのと思えるほど互いに似ていて、互いに影響し、恩恵を蒙(こうむ)っているのに、悲劇の歴史を持ち、傷つき、嫌悪感を抱いているのです。
遠くの人ほど愛しやすいとは、よく言ったものです。利害関係が薄く、性格に「におい」がなく、顔を見なくてもいいからです。しかし、頼りにはできません。一番頼りになるのは、やはり隣人です。隣人がいないと互いに困るのです。しかし、近い分、その声は耳障りで、視線は疎ましく、互いの性質は強烈な「におい」を発します。互いに傷つけ合う「歴史」も築いています。主が、遠くの人ではなく、「あなたの隣人を愛せよ」と命じられた理由がよくわかるというものです。
隣人はいつも隣にいます。遠くの人はめったに近くにはいません。幸福は、近くの人との関係でほぼ決まります。隣人を、主が愛されたように愛するほかないと腹をくくりましょう。