マジソンの慰め

今から百年以上前になりますが、スコットランドにジョージ・マジソンという人がいました。彼は子供のころから目がかすかにしか見えず、しかもしだいに悪化し、20歳ごろには全盲になってしまいました。にもかかわらず彼は努力して優秀な成績でグラスゴー大学、そして神学校を卒業し、牧師になりました。エジンバラの大教会を始め、いくつかの教会を歴任し、どこでも人々に尊敬され愛されました。

  その彼が一度、若い娘と恋愛し婚約したことがありました。しかし、彼女は彼が全盲になると知ると、盲人とは結婚できないと婚約を破棄してしまいます。彼の二重の悲しみは、想像するだけでも胸が潰れます。全盲になった彼の面倒を見たのは妹でしたが、その妹も彼が40歳の時に、結婚して離れていきます。その結婚式のために、彼が作詞した賛美歌があります。現代風に訳し直して、一部紹介しましょう。

    私を見捨てることのない神の愛に安らぎながら、

   私が受けた命を主の深い海にお返し致します。

   私とともに歩んでくださる光なる主よ。

   私の弱い火を強く燃え立たせ、

   真昼のように輝かせてください

   悩める私の心を喜びが訪れました。

   雨の中に虹が立ち、

   私はそれを仰ぐことができるようになり、涙も消えました。

妹の結婚が、若いときの辛い体験を思い出させ、5分で書き上げたそうです。どんな悲しみも、立ち上がることができないほどに、私たちを打ちのめすことはできません。「神よ。私たちをもとに返し、御顔を照り輝かせてください。そうすれば、私たちは救われます」(詩80・3)。