福島訪問(2)

「えっ、水道水を飲んでおられるのですか。」福島の牧師と話していて、思わず口から出てしまった言葉です。私たち東京の人間でさえ飲み水にはミネラルウォーターを使っている。福島市の子供たちの尿からセシウムが検出されているではないか。しかし、これは県外者の不適切な言葉だったと思わされました。以下は、郡山の複数の牧師から聞いた話です。

洗濯、お風呂、歯磨き、野菜や食器洗い・・・すべて水道水を使わないわけにはいきません。料理にも使います。いちいち気にしていたら生活ができなくなります。ストレスがたまって、ノイローゼになってしまいます。ホットスポットは、地域だけではなく、家の中にもあります。線量計で計ると、家の中にも際立って高い所があるのです。また、公表される線量は、ある地点の地面から1mの高さの数値であって、自分の家の庭で地面に近いところを計るとその3倍の量を示します。家の庭なら土を入れ替え、コンクリートで固めたりしますが、そのほかの所は気にしてはいられません。そこで1か月を過ごすのなら気を張りつめていられるでしょう。しかし、そこでずっと生活するのです。

もちろん県外に移り住む人々もたくさんいます。郡山市からは子供を持つ家族を中心に1万人が去ったそうです。父親だけが残るケースもあります。学校のクラスから児童が減っていくと、残った子供やその母親にも動揺が生じます。「(郡山にとどまっている)私は悪い母親なんだろうか」と心が折れてしまう母親もいたそうです。

郡山で牧会するある牧師夫妻は他県出身で就学中の子供もいますが、郡山にとどまりました。それを知ったある母親が「福島県人にではないのに残ってくれてありがとう。1週間食べられなかったけど、やっと食べられます」と泣きながら感謝してくれたそうです。福島の将来は見えません。しかし、残った人たちと共に生きる決心をしています。「福島産は汚染されている」「福島の人とは結婚しない」「福島の人は放射能を運んでくるので宿泊お断り」。そんなことを聞いても「気にしないでいこう」という励ましをしています。残った人たちと困難を共にして生活することが、福音宣教の機会になると考えているのです。(続)