宗教学者の島田裕巳さんの著書『日本の10大新宗教』によると、高度経済成長期にある国では、御利益宗教がはびこるそうです。日本もその成長期にあった時代、さまざまな新宗教が成長を遂げました。また、世界各地のキリスト教会でも、御利益的なメッセージをするグループが教勢を伸ばしました。なぜか。経済が成長していれば、信者の願い事をまかなうだけの御利益が用意できるからです。しかし、現代日本のように、マイナス成長期になるとそうはいきません。日本の経済に、御利益信仰に応えられるだけのキャパシティがないからです。それで今、御利益中心の大手新宗教は、現在経済成長期を迎えている国々(ブラジルなど)に進出して、信者を増やしているといいます。経済が成長している社会でないと、希望を与えられないのです。
昨年、米カリフォルニアの大教会クリスタル・カテドラル(会員7000人)が40億円超える負債で破産しました。主任のコールマン牧師は、「経済不況のため収入が激減した」ことを理由に挙げています(内紛も大きく響いたようですが)。この教会は、ロバート・シュラー牧師の「可能性思考」で、1960年代から急成長した教会でした。私は1980年代の後半の一時期、この教会にはお世話になった身です。アメリカの繁栄に支えられた「積極思考、成功哲学」だったのでしょうか。教会が景気後退に連動したのであれば、残念なことです。
教会は、社会の情勢、動向に無関心であってはならないと思います。しかし、時代の空気に飲み込まれ、世の勢いに追従してはなりません。流されそうなときは、いつも基本に戻らなければなりません。使徒教会に食べ物の分配で問題が生じたとき、ペテロは七人の執事を立てて問題解決に当たらせ、「私たちは、もっぱら祈りとみことばの奉仕に励むことにします」(使
6・4 )という姿勢をとりました。いつの時代にも変わってはならないあり方です。
では、経済不況の社会、震災で不安な時代にあって、教会はどのように伝道し、教会を建て上げていくかです。皆さんにも祈りつつ、考えてくださいませんか。