国民総幸福度

「世界一幸せな国」と称されて、最近話題になっている国とは、どこの国?

答えはヒマラヤの国ブータンです。人口70万人、国土面積4万K㎡足らずという小国ですが、1972年以来、「国にとって大切なのは国民総生産GNP(Gross National Product)ではなく、国民総幸福GNH(Gross
National Happiness)である」という国是を掲げて、注目されています。GNH研究所を設置して、本気で国民の幸福に取り組んでいるのです。何よりも驚かされるのは、テレビ放送が始まったのは1999年だということ。そのおかげで、人々の欲望に火がつかず、貪欲が闊歩するような社会にはなってはいません。国民の平均所得は日本の10分の一以下で、物質的には豊かではありませんが、医療費、教育費などは無料に近く、国民は足ることを知り、心豊かな生活をしているのだそうです。もちろんブータンはユートピアではなく、貧困、社会格差、他国への経済依存など、多くの課題を抱えています。それでも、自然を守りつつ、緩やかな成長を目指すのだそうです。

人類が幸福になれるかどうかは、火がついた欲望をいかに制御していくかにかかっていると思います。制限なき貪欲は、結局、争いと自然の破壊と世界の破局をもたらします。「何が原因で、あなたがたの間に戦いや争いがあるのでしょう。あなたがたのからだの中で戦う欲望が原因ではありませんか」(ヤコブ
4・1)。「どんな貪欲にも注意して、よく警戒しなさい。なぜなら、いくら豊かな人でも、その人のいのちは財産にあるのではないからです」(ルカ12・15)。 貪りこそが不幸の根源なのです。三千数百年前のモーセの第十戒「貪るな」を思い起こすべき時です。

クリスチャンは何が人を幸福にするか、知っているはずです。ブータンは仏教国ですが、キリスト教国やクリスチャンのグループでも、GNPよりGNHを優先すること本気で実践する社会や共同体が現れていいのではありませんか。物質的豊かさや便利さの追求に歯止めをかけ、「いのちの豊かさ」を第一に求める生活を始めようと、私は今、考えています。