NHKの大河ドラマ『平清盛』の視聴率が低迷し、苦戦しているようです。しかし、源平の争いは、現代社会の行く末にとても示唆的だと思うのです。
平清盛は、古代から続く天皇家、摂関家の貴族の権威が、人々の共同幻想の上に乗っかっているだけで、実質的には何の基盤もないことに気がつきました。貴族は伝統的、文化的優位に立つだけで、彼らの地位は、実際には武士の力で守られていたのです。清盛は逆に武力で貴族を抑えて、政治的権力を握るようになります。
しかし、清盛は完全には貴族社会の仕組みを一掃できませんでした。自分の娘を天皇に嫁がせ、天皇家と姻戚関係を結ぶことで権威の基盤強化を図るという、摂関家と同じ方法を踏襲し、貴族生活にはまってしまいました。京都に政権を築いたがゆえに、「古いもの」のしがらみに縛られたのです。また、清盛は権力のもう一つの基盤を、中国の宋との貿易を独占することで得た莫大な富(貨幣)に置きました。
一方、源氏の勢力基盤はまったく異なっていました。平治の乱で平家に敗れたものの、貴族政治とは縁の薄い関東に基盤を置き、純粋な武士の力を育てました。そして、貨幣ではなく土地を所有し、土地を媒体にして家来(御家人)との主従関係を結んでいきました。
そうしたところに、大飢饉が近畿を襲いました。飢餓に苦しむ人々に、貴族的権威や貨幣は何の意味もありません。お金や貴族的地位は腹の足しにはならないからです。こうして平家は急速に求心力を失っていきました。しかし、土地と労働力は食べ物を生み出します。土地を持つ源氏は力をつけていきました。そして、源頼朝が伊豆で挙兵すると、あっという間に平家を滅ぼしてしまったのです。
今の日本人の生活基盤は脆弱だと思いませんか。私たちの職、家屋、お金は、経済恐慌や地震などであっという間に消えてしまうものです。貯金は、銀行にある数字だけではありませんか。立っているところをよく考えてみるべき時です。