ヨーロッパ中世の騎士は、金属製のかぶととうろこ状になった皮製の帷子(かたびら)で体を守り、楯、投槍、長剣、弓矢で戦っていました。それが11世紀になると、防御が著しく発達し、金属製のかぶとには顔面を守る頬あてがつき、胴は鉄製のコート状の鎖帷子をつけて、投槍も矢も通らないものになってしまいました。しかし、一度馬から落ちると自由が利かなくなり、仰向けにひっくり返った羊同然でした。さらに、14世紀になると、ハンドルで弓をしぼって大型の矢を遠くに飛ばす強力な大弓が登場したことで、それに対抗して、目だけを出した鉄仮面と胴体をすっぽり覆う鉄よろいをつけるようになりました。その重さ、なんと80キロ。もはやロボットです。ひとりで着脱できず、ひとりで馬に乗れず、馬も重みに耐えかねて思うように走れず、落馬すればもちろん自由に起き上がれないといったありさまでした。それでも、貴婦人たちの目を引こうと一所懸命だったそうです。
で、次の時代はどうなったか。軽装の歩兵が活躍するようになり、戦いの様相は一変しました。防御より、素早い攻撃が中心になり、騎士の時代は終わりを告げたのです(『ヨーロッパの中世』河出書房新社)。
さて、あなたの信仰はいかがですか。自己防衛が過剰になっていませんか。着ぶくれて、「よろい」の重みに耐えかね、自由に飛び跳ねることができなくなっていませんか。失敗しないように、人から批判されないように、責められても弁解できるように、とばかり考えていませんか。さあ、重い武具は脱ぎ捨てましょう。そして、もっと軽くて安全な「神の武具」を身につけましょう。私たちはキリストによって勝利を保証されているのですから、負けない戦いではなく、「御霊の与える剣である、神のことば」(エペソ6・17)を取って勝つ戦いをすべきです。
「ドン・キホーテ」のように「騎士の時代」にあこがれて、時代錯誤の「肉の戦い」に戻ってはなりません。