みんなが私のようになったなら

? 私は殺人を犯したことがありません。逮捕されるような詐欺や泥棒をしたこともありません。およそ、法律に触れるような犯罪に手を染めたことがありません。また、家族を捨てたり、不倫をしたりしたこともありません。では、世界中の人が私のような人間になったら、平和で幸福な世界になるでしょうか。もちろん、答えはNO!です。

? あなたはいかがですか。世界中の人があなたのようになったら世界は何の問題もなくなる、殺人も泥棒も姦淫も詐欺も不正行為もなくなると思いますか。

 世の中には「いい人」と呼ばれる人々がたくさんいます。彼らは完全ではないけれど、ある程度優しくて、ある程度誠実で、そんなに自己中心でもなく、不正なことをしたら良心が痛む人々です。あなたもそんな「いい人」の部類に入るのではありませんか。そして、だれもがあなたぐらいの「いい人」になれば、世界はかなり平和で幸福な状態になるのではないでしょうか。

 と、考えてはなりません。実は、社会の悪や腐敗は、悪人によってではなく、「自分はまあまあいい人間だ」と思いこんでいる人々によって醸成されていくのです。テレビや新聞などで報道される犯罪人や極悪人は、私たちに「私はあんな悪人とは違って善良な人間だ」と思わせてくれる人々です。彼らの犯罪は裁かれます。しかし、私たちの小さい悪(と思っているにすぎませんが)は裁かれません。そして、社会の底に沈殿していくのは、そうした「自分はまあまあいい人だ」と思っている人々の小悪なのです。

 想像してみましょう。生まれ育った環境がどんなに劣悪であっても、また悪い仲間に影響を受けたとしても、自分だけは盗んだり、騙したり、暴力をふるったり、殺したりしないという自信がありますか。

「しかし、もし私たちが自分をさばくなら、さばかれることはありません」(Iコリ11・31)。自分を裁いて、新しい年を迎えましょう。