飛べないてんとう虫

てんとう虫は一日アブラムシを100匹食べます。農家にとっては作物を荒らすアブラムシを食べてくれるてんとう虫は、ありがたい益虫です。ならば、畑にてんとう虫を放てば、無農薬で作物を育てられることになります。しかし、残念ながら、てんとう虫は羽を開いてどこかへ飛んでいってしまいます。

そこで、飛べないてんとう虫を生み出そうという計画が研究室で立てられました。メンデルの法則を使うのです。飛ぶ能力の低い(羽の回転数が少ない)てんとう虫をオス・メス15匹ずつ交尾させ、生まれた中でさらに飛ぶ能力の低い虫同士をかけ合わせ、そうして4年30世代を経て、ついに飛べないてんとう虫が出てきました。羽を開いて飛ぼうとしますが、こてんと転倒して、飛ぶことをあきらめてしまうのです。ちょっと哀れな気がしますが、同じ畑にとどまり、アブラムシを平らげてくれます。農家は助かりますね。何しろ農薬を散布しなくてもいいのですから。もちろん、いずれ外から飛べるてんとう虫が来て交尾し、次の世代は飛べる虫になってしまうでしょう。それでいいわけです。自然なのですから(NHKHiビジョン『いのちドラマチック』)。

飛び立っていく虫がいていいし、飛べない虫がいていい。「飛べないてんとう虫」は、農薬代わりに役立ちました。農薬が使われない分、「飛べるてんとう虫」も恩恵をこうむっています。これは確かに「人為的」です。しかし、主は私たちにも「神為的」なことをなさいます。人はそれぞれ「強さ」「能力」だけでなく、「弱さ」「不能」も現れるように造られています。私たちは「弱さ」「不能」を役に立たない部分や障害とみなしたりしますが、主には別の意図があるのかもしれません。きっと私たちの「弱さ」はどこかで役に立っているのだと思います(私は吃音のため辛い思いをしましたが、書くことに努力できました)。それを知ることができたら、自分の「弱い部分」にも感謝ができるのかもしれません。