なでしこジャパン

ワールドカップで「なでしこジャパン」が、身長、体力、実績で圧倒するアメリカを破り優勝したのは、まさに「何か大きな力」(米ゴールキーパー・ソロの感想)が働いて起こった奇跡でした。そして、近年、これほどまでに敵味方関係なく驚きと感動を与えた「勝利」はないと思います。

それは、各国の報道でもわかります。「疲れを知らぬ走りと2度追いついた強靱な精神は女子サッカーの斬新なイメージを打ち立て、アジアの地位を高めた」「美しいサッカーと美しい奇跡は被災した民族に自信をもたらすだろう」(中国新華社)。「米国選手らは世界一の座から落ちたことを残念に思うと同時に、日本の勝利の瞬間を密かに誇りに思っている」(NYタイムズ)。「アメリカ以外が優勝するなら、日本であって欲しかった」(米選手)。そして、フランス、スウェーデン、イタリアなどの各紙もトップ級の扱いで「なでしこ」のプレーの正確さや「粘り強さ」を称え、三連覇の望みを断たれた開催国ドイツも日本を絶賛していました。

日本の女子サッカーの歴史は30年、競技人口は少なく、選手は外国選手に比べ小柄です。また選手生活の条件は悪く、国内選手16人中プロは5人(主力4人は海外クラブ所属)で、最優秀選手に選ばれた澤穂希でさえ年俸300万円、アマの選手は報酬ゼロだそうです。そんな彼女らが世界を制したのです。だから敵味方を越えた喝采を呼び起こしたのだと思います。小さく、力弱く、追い詰められた者たちが、最後まであきらめず、奇跡的に追いついて勝利する、そんなドラマを、世界は待ち望んでいたのではないでしょうか。

「神は、・・強い者をはずかしめるために、この世の弱い者を選ばれたのです。また、この世の取るに足りない者や見下されている者を、神は選ばれました。すなわち、有るものをない者のようにするため、無に等しいものを選ばれたのです」(I コリ1・27、28)。「死にそうでも、見よ、生きており、・・悲しんでいるようでも、いつも喜んでおり、貧しいようでも、多くの人を富ませ、何も持たないようでも、すべてのものを持っています」(Ⅱコリ6・9、10)。この言葉が彼女らに実現したようです。信仰者が世から励ましを受けるのも悪くないでしょう。