イエスの生涯

「イエスは貧しい庶民のひとりとして、へんぴな村ベツレヘムに生まれた。育ったのは別の村ナザレで、私生児と蔑視されながらも、30歳まで大工として働いた。次の3年半は巡回説教者だった。1冊の本も書かなかった。何の公職にもつかなかった。結婚もせず、家さえ持たなかった。大学にも行かなかった。ローマに行ったこともなかった。自分が生まれた場所から5百キロと離れたこともなかった。ふつうの人が偉大だと思うようなことは何一つしなかった。イエスが持っていた資格を証明するものといえば、自分自身しかなかった。 権力者たちが彼を危険人物として迫害するようになったとき、まだ33歳だった。3年半付き合った友らは逃げ去った。ひとりはイエスをお金で売り渡し、他のひとりはイエスなど知らないと言った。イエスは敵に引き渡され、不正な裁判にかけられ、犯罪人として、ふたりの犯罪人に挟まれ十字架でくぎづけとなった。 十字架上で死にかかっているとき、地上での唯一の所有物であった着物をめぐって死刑執行人たちがくじを引いて分け合った。イエスが死ぬと、友人の同情によってその遺体は借り物の墓に納められた。孤独な人で、何も残さなかった。惨めな人生だった。 なのに、2000年が過ぎ去った今も、イエスは人類史にこれ以上ない影響を与え続けている。これまで存在したすべての王、すべての軍隊、すべての議会、すべての思想家を合わせてみても、イエスほど、人々の人生に影響を与えたものはない」(ケネディに加筆)。 仏陀や孔子は良き弟子たちに恵まれ、経典や書物を残しました。ムハンマド(マホメット)も多くの信者と軍隊を持ち、妻や子どもたちや親族にも恵まれていました。生前から、信徒の組織がしっかりと確立していました。しかし、イエスだけはこの地上を去ったとき、何もなく、残したのは語ったことばと「聖霊を送る」という約束だけでした。すべてゼロから始まったのです。救いは人の手によらないことの証明でした。