未来への誠実な投資

投資家は、企業が成長するかどうかに注目します。今の業績も大事ですが、この先の伸びはさらに大切です。企業が成長すれば株価が上昇し、利益が得られるからです。

では、企業の成長を、どのように予測するのでしょうか?ひとつの指標は、研究開発費です。現在成績の良い企業でも、目下の得意分野に資金を集中させた結果の成績なら、今後の成長は見込めません。新しいものの開発にきちんとお金を使っているかが、指標となります。

カナダにバリアントという製薬会社があります。2000年代に株価が急上昇し、投資家は儲けに沸いていました。しかし、あまりに急な躍進に疑問を持った投資家が、会計報告を見ると、研究開発費がゼロ。開発部門自体を廃止していることが分かりました。それだけでなく、他の製薬会社を次々に買収し、その開発部門も閉じていました。買収したのは、他企業に代替薬のない「唯一の薬」を販売する企業ばかり。そしてその薬の値段を、買収後に何十倍にも上げていることが判明しました。その会社にしかない薬を使っている患者は、高い薬を買わざるをえません。バリアント社はそうやって、短期間に莫大な利益を得ていたのです。

これらすべて、当時の法律に違反するところが何一つありませんでした。犯罪ではないにしろ、「未来のための金を使わない、そして今持っているものから目先の利益を搾り取る」という方法で、見た目には非常に良い業績になってしまうのです。調査した投資家は、この企業の業績悪化と株価の暴落を予想し、果たしてその通りになりました。

聖書は、未来に投資することを教えています。今持っているものを、まだ見ない未来のために使っていくことです。いただいたタラントを用いること、天に宝を積むこと、です。イエスさまご自身が、当時まだ生まれてもいない私たちの救いのために、そしてアブラハム契約の完全な実現を先に見て、ご自分のいのちを支払われました。

私たちの人生の「会計報告」に、未来につながる誠実な支出は、どのような形で、どれくらい、計上されていますか? (新田優子)