バッハとパスカル

? J・セバスチャン・バッハは晩年、失明の危機を迎えましたが、それでも夜遅くまでローソクを灯して創作を続けました。「私は目が見えるかぎり書かなければならない」と言い、ローソクが燃え尽きると「ローソク。ローソク」と妻のマグダレーナに叫んでいたそうです。手術がうまくいかず、ついに失明が決定的になった夜、彼は動揺した様子もなく妻に聖書からキリスト生誕の箇所を読むように頼みました。妻が読み終わると、彼は静かに語りました。「私たちは苦しみを悲しんではならないのだ。この苦しみは、私たちの苦しみをすべて背負われた主イエス・キリストに近づくためのものなのだ。」

 フランスのパスカルは天才的な数学者であり、また「パンセ」という不朽の名作を残したクリスチャン哲学者でもありました。彼は三十代、病気と貧困に苦しみ、短い生涯を閉じます。晩年はどんな労働もできない体になりましたが、それでも杖にすがり、あるいは人の手を借りて、毎日のようにパリの教会を巡り歩いたといいます。彼はこう言っています。「どうか私をかわいそうだと思わないでください。・・・・病はクリスチャン本来の状態です。」パスカルにとっても、病気の苦しみはキリストに近づく道だったのでしょう。

 クリスマスは苦しみさえも希望に変った日です。救い主がお生まれにならなければ、豊かでも暗闇であり、健康でも絶望です。しかし、救い主が来られたので、貧困、病気、失明でさえも神に近づく道となりました。

 今年、大なり小なり、喜びもあれば苦しみもあったことでしょう。しかし、プラスマイナスすれば喜びの方が多い、あるいは少ないという問題ではないのです。喜びも苦しみもすべて主にあってプラスなのです。

今年の大いなる喜びを感謝しましょう。そして悲しみも、キリストに近づく喜びに変えられることを確信して感謝しましょう。